2016年度
第2回ホームカミングデー、OB・OG講演会
昨年に引き続き、今年度もヴェリタスOB・OGの先輩方による講演会を開催しました。今年は、建築、報道、医療の世界の第一線で活躍されている先輩方をお呼びし、ヴェリタスにいた頃の学びが将来にどう繋がっていったのかという、「今のヴェリタスでの学び」と「社会とのつながり」について、語っていただきました。
また、学生にとってより身近な先輩である現役大学生からの大学生活に関する話の場も併せて持ちました。オープンキャンパス以上に率直で、より具体的な生の声が聞けたのではないかと思います。
- 開催日時
- 2016年5月29日(日)13:00~
- 開催場所
- ヴェリタス2号館3階 第7教室
- 参加費
- 無料
- 参加資格
- 会員・講習会員・卒業生
(上記の同伴を得られる方、参加者1人につき2名まで)
2期生 石澤宰(竹中工務店)
「自分をスペシャルにする」という石澤さんの言葉が強く印象に残った。自分のスペシャルさとは何か、それを探すにはどうしたらいいのか、この問いに対する答えの1つは学ぶことだと石澤さんは言う。とりわけ、インプットしたら必ずアウトプットを出すということを、学生時代からずっと変わらず実践してきたそうだ。
アウトプットすることは、自分は自分、相手は相手という、境界を曖昧にしてくれ、他者の視点を自らの内部に持ち、また同時に、他者に対し自らの視点の一部を共有してもらう可能性をもつものだからだと。それはまた、周りに対しても主体性を持ち、学びをより一層加速させることにつながる。
更に言えば、皆と同じ勉強をして同じ結論になるのであれば、それはアウトプットの動機にはならない、だからこそ皆と同じ内容を扱っていても、その中で、好きなこと、自分にとってのスペシャルさは何か、を常に考えることになる。どんなに些細なことでも自分にとってのスペシャルさを見い出すことができれば、またそれが動機やモチベーションになって、続けていける。そうして徐々に獲得した自分だけのスペシャルさが、周りの人たちに影響を与えるインフルエンサーへと自分を変え、自分の道を切り開く武器になるのだとを石澤さんから学んぶことができた。
7期生 加藤智敬(柏市立柏病院 外科医)
加藤さん曰く、医療の世界は、ほとんどのことがわからない世界と言っても言いすぎでないくらい、曖昧な世界だそうだ。人間の体は大きなブラックボックスのようなもので、こうすればこうなる、といった経験則しかないため、勉強しても勉強しても、完全に理解するということが非常に難しいからだ。 ただし、たとえ理解しきることは不可能でも、その狭間のプロセスに対し独自の解釈をもつことは可能だと加藤さんは言う。
本にはあまり書いていない、主観と客観の間にある解釈にこそ、医師の真価があり、そのことは、医師の間で信頼を得ることのできる医師ということにも関連があるという。医師には、頭が良くて、性格も良いが、医師の中で信頼されているとは限らないということがよくあるそうだ。
ではどういう医師が信頼を勝ち取るのか。例えばそれは質問の仕方に現れる。上の先生に質問をするとき、答えを聞くような質問の仕方は初歩の初歩でしかない。なぜなら経験則については本に書いてあるものだからだ。それよりも、その経験則に対する自分の解釈を質問に載せて、相手の解釈・意見を引き出すような質問ができるか、このことが信頼感につながるのだそうだ。
それは医師の世界も高校生として学ぶ場合も変わりない。自動化した対処を、なんとなく真似るのでなく、常になぜこの判断をしているのかという目線で物事を見、自分なりの解釈をつくっていき、医師同士のコミニケーションの中で、他の人の頭を借りる。この思考の追体験こそが大事だという加藤さんの言葉を受け、生徒たちからは今の学びへと活かしていきたいという声が聞かれた。
13期生 鏡味瑞代(NHKディレクター)
鹿と寺社仏閣に囲まれた古都奈良でディレクターを勤める鏡味さんは、 取材に始まり、構成、撮影、編集、収録、放送と番組制作の全過程に携わっているという。番組作りにあたり、日常の中で常に起き、消えていくものの中から、自分の切り口で掬い出すことを常に意識していると語っていた。
と同時に、単に気になったことをピックアップして伝えるだけではなく、見た人自身がどれだけ考える余地のある状態で提示するか、そこが番組づくりをする上での勝負所だとも。報道の仕事自体、あらゆる圧力がかかる仕事であるけれども、自分が大事にしていること、気になったことを中心に仕事を組み立てていくためには、どれだけ自分が他者を深く理解していて、どれだけ自分が対象世界を深く理解しているか、そのことを常に自ら問わねばならないと考えているという。高校生だったころを振り返ると、まさにヴェリタスでの学びがその土台を築いてくれたそうだ。生徒たちも目の前にいる卒業生の人の名前と声が、NHKの映像から流れてくることに、新鮮な感動を覚えていたようだった。
16期生(国立理系・国立文系・国立医系・私立医系)
座談会
懇親会
参加した生徒たちの声 ~講演から何を学んだか~
- 検証や実験をし、自分なりの意見を持つことが大切。追体験することで得られるものはあるかなと思いました。
- 勉強しなければならないからするというよりも、知りたいことを知れるようになるために勉強するという姿勢を大切にするべきだということ。将来を見据えた上で今何をするべきなのかを考える。
- 表現することの難しさと同時に、それが人に伝わったときは一層嬉しいということ。ディレクターの仕事は番組制作の一部始終に関わっているからこそ、できあがったとき達成感があると思った。
- 時間の限度は決まっていて、その中で必ずしなくてはならないことも決まっている生活の中で、自由な時間を自分のためにどう過ごすべきか考える。
- どんな仕事にもコミュニケーションを取ることが大事で、人や自分が興味を持てることとの出会いによって、自分の新たな可能性を見つけることができること。
- 石澤さんのお話を聞いていると、1つのことに対して、様々な角度から考えていくという建築の仕事は面白いと思いました。
- 他人から信頼されるためには、その人に対してどれだけ寄り添って考え、行動することが大切だと思いました。
- 加藤さんのお話の中にあった「追体験してみる」ということは、とても共感できました。実際僕は数学の問題を考える時「清水先生ならこの側面からくるかな?」などと考えていて、こういう考え方を続けていこうと思いました。
- 建築に興味はあったが、具体的にどんな仕事があるのか、建築と一口に言っても、たくさんやることがあると知れて、とても面白かった。建築は図面を描いているイメージだったが、より人と関わる仕事なんだなと感じた。
- テレビは好きだし、見るけれど、その番組がどのように作られているかを知れたので、番組の少し違った見方ができるなと思った。
- 外科医について本で読んだり、テレビなどで見たことはあったが、実際の仕事の臨み方や生活を聞くことができて、少しだけイメージが変わった。勉強し続ける大切さもわかった。
大学入学したあとの、勉強の大変さ、有意義に時間を使うことの大切さ、自分が何をやりたいかを大事にすることが必要だと感じた。 - 建築家についてはほとんど知らなかったので、話を聞いてとても奥が深いなと思いました。
ディレクターの人が番組全てに関わっていると初めて知りました。深く考えずに番組を見ていたので、色々な過程があると思いました。 - 周りに医者が多いけれど、実際にどんなことをしているのかは全くと言っていいほど知らなかったので、とても興味深い話でした。
- 「メリハリが大事」という話で、わたしは今の時点でそれができていないと思いました。今からしっかりしないといけないと思います。
- 今まで気にしていなかった建築の世界を垣間見た気がしました。大学に入った後のことも考えるきっかけになりました。理系だからといって理系のものにとらわれず、勉強したいと思いました。
- 情報という無機質なものは元は人という有機的なものから派生していて、それをメディアという媒体を通して再び意味のある含みの有機的なものに昇華していくというのがわかりました。
- 勉強や日々の物事への取り組み方を顧み、再び構築することの大切さがわかりました。