『奥山准教授のトマト大学太平記』(奥本大三郎著、幻戯書房、2011年)
これまで私が書いてきた書評を読んだことがある方には、もはや隠しきれなくなっているかもしれない。私は天邪鬼である。これまでの人生でも、これからの人生でも、有名本の書評を書くことはできるだけよそう、と固く決意している。今回私が選んだ本も、おそらくは、あまり世間では知られていないだろう。「とある大学教授の日常を題材にした小説」というジャンルであれば、筒井康隆氏がものした『文学部唯野教授』(岩波文庫、1990年)などが有名であり、この本を挙げる人はあまりいなそうである。私は、あまり知られていない本や、読むべきでないとされている本のなかで、とても面白かったものを「ゲキシブ本」と呼称しており、こうした「ゲキシブ本」の中で、よく読むと興味深いことが書いてある部分を引用して褒めちぎるということをしばしばやってきた。…