2017年度

第3回ホームカミングデー、OB・OG講演会

昨年に引き続き、今年度もヴェリタスOB・OGの先輩方による講演会を開催しました。今年は、医療、司法、報道の世界の第一線で活躍されている先輩方をお呼びし、ヴェリタスにいた頃の学びが将来にどう繋がっていったのかという、「今のヴェリタスでの学び」「社会とのつながり」について、語っていただきました。

また、学生にとってより身近な先輩である現役大学生からの大学生活に関する話の場も併せて持ちました。オープンキャンパス以上に率直で、より具体的な生の声が聞けたのではないかと思います。

開催日時
2017年5月28日(日)13:00~
開催場所
ヴェリタス2号館3階 第7教室
参加費
無料
参加資格
会員・講習会員・卒業生
(上記の同伴を得られる方、参加者1人につき2名まで)

4期生 正司俊博(千葉県救急医療センター)

医師の仕事は、患者さんを検査したり手術したりする臨床と、患者さんを診た上で出てくるわからないことを研究する研究、他には医学生の教育であったり、厚生技官の官僚など働いている分野は多岐にわたる。正司さんは研修医を終えた後、大学院で研究をし、今また臨床の現場で働いている循環器内科の医師である。世間一般でも医師というと臨床のイメージが強いが、研究というのも医学の進歩にとって大切であること、また臨床とは違う面白さがあるということを話されていた。

研修医を終えたあと、臨床に進む人が多いなか、正司さんが研究の道を選択されたのは、なぜなのか。正司さんによると、臨床つまり日常の診療が、すでに設けられた基準から診断し決まった手順で治療する、言い換えれば、選択肢が限られている中から判断を確率が高いものを判断していくのに対し、研究というのは、自分で自由にテーマを決め、仮説を立て、その仮説を実証するところまでを全て自分でやらなければならない、そこにに面白さがあるからだと。

また、研究と臨床が全く別のもので、全く別の人がやる、というわけでもない。医学の研究でも、そのヒントが臨床の現場にあり、そのヒントから臨床をしている医師が研究を始めることもある。実際に正司さん研究では、狭心症の患者さんを診察していると、冷たい風が当たると苦しいとか、夏よりも冬が辛いという声が、きっかけになったという。上の先生に訊いても冬の方が発作が起きやすいということも言うけれど、その理由に対する答えもない、日本で出ているガイドラインにも何も載っていない。その患者さんから出てきたことが出てこない。そういった日常の診断からの疑問が、正司さんの調べたいという動機になり、そしてそのことが患者さんの発作の季節性変動という研究になり、大学院生時代の論文になったという。

正司さんがおっしゃった中で印象的だったのが、研究を続けていく上では、自分が楽しくなければ続けられるわけがない、かといって、理想だけを追いかける実現しそうもないことを続けるのは意味がない、どの場面でも、何かを決断するときに
1)実現可能性はあるのだろうか
2)楽しそうか、自分の性格に合っているのか
3)そして、その結果、自分の可能性を広げられるか
の3つを考慮すること、その中で自分の進路を選択していく、という言葉であった。この言葉には、参加した高校生からも反応が大きく、これからの進路をどう考え、どう決めるのか、参考になった視点のようだった。

7期生 宇治野壮歩(長島・大野・常松法律事務所)

弁護士という仕事にどれだけのリアリティがあるだろうか。宇治野さん自身が高校生の時も、法学部を受験する際に身近に弁護士がいるわけではなく、「弁護士というのはどんな仕事か?」というのを高校生に伝えたいということで講演してくださった。

弁護士といっても六法全書を隅から隅まで覚えているわけではない。むしろ、裁判や紛争で決着が着くのは六法全書以外の部分であり、それよりも法律をどう解釈するか、事実をどう認定するのか、それが弁護士の大切な技能であると宇治野さんは語っていた。例えば新しいビジネスの時に契約書というのを作成する、この際にも弁護士が活躍する。ここで交わされる契約書では、契約期間の間に起こりうる事態を予想し仮説をたて、その事態に対する対処を条項として明確に矛盾なく書き出し、そしてその条項が法令に違反していないようにせねばならない。そこで大切になってくるのが法律をどう解釈しているか、どう理解しているかである。

法律は具体的過ぎては色々な事例への適用ができないため、抽象的に書かれている。しかし、それゆえ解釈が1通りに定まらないことや、他の法律と一見矛盾するものも多くあるという。なので、弁護士は、単に現行の法律を解釈するだけでなく、その法律がどう作成され、どう変更され、そしてその際にどういう議論があったか、背景や過程まで調べて、ようやく法律の解釈をするという。わからないことを粘り強く調べ、考え続ける姿勢が弁護士には欠かせない、そう語る宇治野さんが印象的だった。

普段から時間的な流れを追いながら解釈し学んでいくことが、法律というところでも大事になるということ、また弁護士という仕事の中に、与えられた情報から仮説を立てて説明すること、ヴェリタスでの普段の学び方が、そのまま活きていることに高校生たちも驚いているようだった。

11期生 根本涼(大手新聞社)

根本さんの1日の例を見た学生からの、こんなに予定がびっちりで心が休まる時間はあるのですか、という質問に対し、何より仕事が面白いので苦ではない、と語っているのが印象的であった。記者は日々起こる様々な事件や事柄にアンテナを張り、色々な人に取材に行く。大学の教授、政治家から普通の主婦にまで。根本さん曰く、名刺を見せてどんな人にでも話が聞けるというのは記者の特権であるという。

ただし、単に聞くというだけで記事は生まれない。起きていることをいち早く正確に伝えること、何が問題になっているのかをわかりやすく伝えること、誰も知らないことを世に出し伝えること、この3つが記者の仕事であり、そのためには、一つ一つの取材の中で「謙虚」でいること、自分はあくまで専門家ではない、だからこそ知ったかぶりをせず、疑問を持ち自分で仮説を立てて、また聞き続ける姿勢が一番必要であると語っていらした。

真摯に聞くという姿勢というのは、根本さん曰く、ヴェリタスで培われたものであり、とにかく聞き続けることでこそ、ヴェリタスで得られるものは大きくなる、この言葉に生徒はとても納得している様子だった。

大学生講演(国立理系・国立医系・私立医系・私立文系)

座談会

懇親会

参加した生徒たちの声 ~講演から何を学んだか~

  • 医師はなってからが大変とよく聞きますが、日々自分の力が試されている感じ(センター・二次風に例えられていてわかりやすかった!)なんだなとわかり、大学受験は通過点でしかないんだなと思いました。いろいろなタイミングで自分の将来の方向性を決めねばならないのも辛そうと思いました。
  • 臨床だけでなく、わからないことだったりをテーマにして研究することも大切なんだなと思いました。
    法律だけではダメで幅広い技能が求められ、弁護士の活動の幅広さにも驚いた。だからこそ、学び続け、想像力を大事にすることが必要なんだと思いました。
  • 弁護士に必要な情報を様々な形で扱う能力は大学受験をする際にも必要な能力と同じなので、そういうところを意識していこうと思った。
  • 私も一つのことを様々な視点から見られるようになりたいと思った。
  • 弁護士は一つの問題について、とても細かく考えられる必要があると思った。また自分側だけでなく相手側のことを考えることも大事なので、自分のできることを多くする必要があると思った。
  • 新聞記者というと本当に忙しそうなイメージがあったのですが、話題のニュースの最前線に入れることは楽しそうだなと思いました。又、疑問を明らかにするというのはとても大事なことだと思いました。
  • 一つの問題について、いろいろな視点から見るのが大切。どの仕事も、色んな教科の知識が必要になってくる。
  • 記者になる上で重要なことのリストアップを見て、勉強をする際に先生たちから言われていることが含まれていて、大学合格だけでなくてその先も仕事をする上で生きてくるとわかりました。
  • 新聞記者の方々は正しい情報を一早く私たちに伝えることで安心を与えたりしようというモチベーションを持っている職業なのだと知ることができました。また「記者は専門家ではない」からこそ、私たちと同じ目線で多くの仮説を立て、取材することで、詳しく理解しやすい記事をつくってくださっているのだと思いました。
  • 大学に入ってから時間は限られているから、やりたいことは中途半端にしないことが大事だと感じた。
  • 「メリハリが大事」という話で、わたしは今の時点でそれができていないと思いました。今からしっかりしないといけないと思います。
    記者に大切な、鳥の目(上から)虫の目(下から深く)魚の目(流れを読む)、物事を客観的にいろんな視点を持つことを持つことは、大事だなと思いました。
  • 「循環器内科」が何かすら知らなかったので、その点について知れた。
  • 一般的に言われていることを自分だけで解決するのではなく、周りと議論することが大切なんだと思った。