2022年度の夏学期のL5クラスでは、その活動の一部として、有名かつ読みやすい短編小説を幾つか選び、参加者がそれぞれ担当箇所を決め、その翻訳を作っていきました。学校の期末テストと時期がかぶるなどして、担当者が訳稿を提出できない場合には、他の参加者が代わりに翻訳したりするなど、皆が助け合って翻訳に挑戦していました。また、授業本番では、各人の訳稿に他の参加者がコメントをしていったのですが、細かい表現にも皆がこだわりを見せ、一語一語を大切にする態度を実践的に学んでいました(授業風景については、写真をご覧ください)。また、学期の後半になりますと、参加者は他人と自分との言語感覚の違いにも敏感に気がつくようになり始め、翻訳対象の文が言いたいことを正確に反映させた上で、どのような表現がもっとも読者の心を打つかといった高度な問題意識にも目覚めていました。翻訳において肝要なのは、作者の意図を決してねじまげてはいけないという意味での制限と、その制限の中で発揮されるべき翻訳者の工夫という意味での自由とが、バランスよく同居していることなのですが、このことを途中から生徒たちもはっきりと理解し始めていたように思われました。この授業で扱った作品は、具体的には、①マーク・トウェイン著『カリフォルニア人物語』、②オー・ヘンリー著『最後の一葉』、③エリス・パーカー・バトラー著『ブタはブタ』、④ワシントン・アーヴィング著『悪魔とトム・ウォーカー』、⑤ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)著『日本海に沿うて』、⑥ジャック・ロンドン著『キーシュ』などです。これらの英米文学における小品(ではあるが粒揃いの作品群) を訳していきました。この成果物は、一冊の冊子にして配布されます。使用テキストはこちら、皆で作った翻訳はこちらからご覧になれます。